養育費

Q1.養育費とは何ですか?

A1.子の監護(=面倒を見ること)に必要な費用のことをいいます。

親には未成熟子に対する扶養義務があり、これは離婚をしても変わらずに存在します。

未成熟子とは、自己の資産又は労力で生活できる能力のない者をいい、経済的に自立していない子どものことをいいます。

離婚により親の一方が子を引き取って監護する(=面倒を見る)場合、そのために必要な費用については、親は子が親と同程度の生活ができるように、子を引き取らなかった親も費用を負担する義務があります。

また、民法776条1項においても、父母の協議離婚の際にはこの監護に要する費用の分担についての事項を定める必要があるとされています。この「子の監護に要する費用」が養育費と呼ばれる費用です。

養育費は、子の監護をしている方が権利者として、この監護をしていない方に義務者として請求します。

 

Q2.養育費の額はどのように決まりますか。

A2.子の人数及び年齢並びに親の互いの年収を考慮して決めます。

養育費の算定について、家庭裁判所は標準的算定方式という算定方法をとっています。計算の考え方としては、親のそれぞれの収入から一定の経費を差し引いて、それぞれの基礎収入を算出します。その後、非監護親(=子の面倒を見ないことになった親)の収入のうち、子に割り振られるべき生活費を算出して、その生活費を義務者と権利者の基礎収入で按分して計算します。

家庭裁判所では、これらの計算結果について、簡易かつ迅速に計算できるように、概ね2万円の幅を持たせて整理した標準算定表というものを発表しており、調停や裁判になった際にはこの算定表による計算結果を重視します。

【参考URL】

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

裁判所ホームページ「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」

この算定表は子どもの人数と年齢によって9パターンの表があり、親の年収から養育費の額を計算します。この収入は給与所得者の場合は、源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)が年収にあたります。自営業者の場合は、確定申告書の「課税される所得金額」が年収にあたります。

 

Q3.養育費はいつからいつまで支払う必要がありますか。

A3.養育費は、子どもが経済的に自立するまで支払うことになります。

多くの場合は、20歳に到達するまでとされます。ただし20歳未満でも、現に就職して収入のある者は未成熟子には当たりません。

20歳に達した場合でも、大学に進学したなどの場合については、親の資力や学歴、家庭環境を考慮して、当該環境のもとで大学への進学が通常のことと考えられる場合には、大学卒業時までの扶養義務が認められる場合があります。

養育費の額を決める時点で大学進学が内定しているなどの場合は、養育費の算定にあたって、大学への在学期間を考慮することが考えられます。一方で、将来大学進学を予定しているにすぎないような場合は、20歳に達したときに改めて従前の養育費の増額や支払期間延長の申し立てをする必要があると考えられます。

また、20歳に達した場合でも病弱などの理由で就労できない場合は未成熟子として扱われます。

 

Q4.例を教えてください。

A4.以下の事例を検討します。

   例:夫:給与所得者、年収500万円

     妻:給与所得者、年収125万円

     子:1人(10歳)

《子の監護権者が妻に決まり、離婚に伴い養育費の算定する場合》

①この例で見てみると、養育費の支払いを求める場合で、夫婦と14歳未満の子どもがいる場合なので、参考URLの中の(表1)養育費・子1人表(0~14歳)の表を用います。

②次に、この表で縦軸の義務者(この場合夫のこと)の年収の500万円の線を横に延ばし、横軸の権利者(この場合妻のこと)の年収125万円の線を上に延ばした線とが交差する場所を見ます。

③すると、4~6万円の幅の中央からやや上方部分にあたります。そのため、養育費はこの範囲を目安に決定していくことになります。当事者双方の事情にもよりますが、月額5万円になることが考えられます。これを離婚が成立したときから基本的には、子どもが20歳になるまで(場合によっては大学を卒業するまで)毎月支払うことになります。

※婚姻費用に同じ。

 

Q5.養育費の支払について離婚協議で決めましたが、相手方が払ってくれません。どうすれば支払ってもらうことができますか。

A5.養育費の履行を確保するためには、養育費の支払いについての合意を公正証書にまとめた上で、履行しない場合はただちに強制執行に服する旨の文言を入れると良いです。

履行確保の方法は、履行勧告、履行命令、直接強制、間接強制の4つの方法があります。

履行勧告は家庭裁判所が義務者に履行するように勧告する方法です。メリットは手数料のかからない簡易な手続きですが、デメリットとしては、強制力が無いため、相手方が任意に応じ無ければ成果が上がらないということが挙げられます。

履行命令は、家庭裁判所から義務の履行を命じる審判を行うものです。履行命令を発せられた義務者が履行に応じない場合、家庭裁判所は10万円以下の過料に処することができます。しかし、実際上、履行勧告に比べたら利用例は少ないようです。

間接強制とは、養育費の支払に応じない場合は、月額の間接強制金を支払わせるという方法です。しかし、任意の支払に応じない以上、間接強制金の支払にも応じることは考えにくいためなのか、利用例は少ないようです。

直接強制は、給付を命じる審判や調停調書などの債務名義に基づいて義務者の財産などを差し押さえる方法です。養育費の支払について定めた調停調書は、執行力のある債務名義と同一の効力を有します。

夫婦間の合意を公正証書にしたものについては、「毎月末日限り●●円を支払う」というような明確な給付文言があり、かつ債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨の強制執行認諾文言が書かれていなければ、執行力のある債務名義としての効力は生じません。

強制執行の手段を用いる場合、権利者の側で義務者の財産を特定して、差押手続きをする必要があります。

民事執行法が改正されたことで、執行力のある債務名義を有する債権者は、強制執行をしても債務の弁済を受けることができない場合に、財産開示手続を利用して、債務者の預金口座等の情報について裁判所を通じて調査することができます。強制執行をしても債務の弁済を受けられない場合とは、例えば権利者の側で銀行口座に対する差し押さえを実施してもその金融機関に預金口座を有していなかったり、預金がなかったために養育費の弁済を受けることができなかった場合などが挙げられます。

 

Q6.離婚から期間が経ち、経済的な事情が変わって養育費の支払いがつらくなってきました。どうしたらいいですか。

A6.相手方に対して養育費の減額を求めて交渉する又は養育費減額の申立をすることが考えられます。

養育費の支払いは親の子に対する扶養義務を根拠にしています。子の扶養義務とは、離婚しても子は親と同程度の生活ができるように費用負担をする義務を負うというものです。一方で、子の扶養義務は、扶養義務者の生活を犠牲にしてまで、負担する者でもありません。そのため、一度調停で養育費について決定した後、事情に変更が生じたときは、養育費についての減額又は増額を求めて調停を申し立てることができます。

 

Q7.養育費の変更を求める「事情に変更を生じたとき」とはどのような場合がありますか。

A7.養育費を決めた協議や調停のときには予見出来なかったような、当事者の仕事や健康上の理由等の事情で、かつ事前に決めた養育費を維持することが困難な程度の事情の変更が顕著であるときとされています。

具体的な裁判や審判の例を見ると、養育費の変更については、収入の変動や、養育費を支払う親や養育費を受け取る親が再婚し再婚相手が子との養子縁組の締結した場合や、再婚相手との間に子が産まれたとき等に認められやすい傾向があります。

 

Q8.弁護士に依頼することのメリットはありますか。

A8.弁護士に依頼するメリットとしては、交渉について委任した場合、相手方と直接やりとりする必要が無くなるという点が挙げられます。

また、夫婦の収入について争いがある場合や、夫婦が高収入や子どもの数が多くて算定表が機能しない場合等の複雑な事案にも対応することができます。また、子どもが大学に進学する時の養育費を請求する場合、留学をしている場合、等、困難な事例についても依頼者の主張できる材料がないかを検討します。まずはご相談ください。

 

 

 

 

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