セミナー・公演
平成28年年3月18日残業代(裁判実務、労基署実務の最前線)セミナー
今回のセミナーでは、前回の企業法務実務セミナー(第10回)に引き続き、残業代をテーマに、残業代の実務編をお送りしました。
前回のセミナーに引き続き、今回も沢山の方にご参加いただきました。今回のセミナーの概要は、以下のとおりです。 |
第1 前回のおさらい+ONE
前回、残業代の問題で、使用者側として落とし穴になりがちな項目をお伝えしてきましたが、今回、おさらいとして、①自主的残業、②管理監督者、③みなし労働時間制、④固定残業代についての落とし穴をお伝えしました。①~④に共通する点は、使用者側が労働時間の管理をしていないので、使用者側が敗訴した場合、高額な残業代が認定されてしまうというものです。
第2 給与体系を変更する場合の注意点
固定残業代等をやめ、残業代をきちんと計算して支払う場合、残業代の支給を踏まえて、基本給の変更も考えられますが、労働者にとっては基本給の減額になり、不利益変更になります。
この場合、就業規則で規定することも考えられますが、高度の必要性や合理性が要求されることになります。また、その他の方法として、労働者と個別に合意するか、労働組合と労働協約を締結することも考えられます。
いずれにせよ、既存従業員の給与の変更は、ハードルが高いので、新しく採用する従業員から給与を変更することも考えられます。この場合、不利益変更には当たりませんが、既存の従業員との賃金の不平等が問題になることもあります。
第3 残業代請求訴訟について
1 労働者側の立証方法
労働者側が残業をしていたことを立証する方法としては、タイムカード、PCのログ、入退館のセキュリティ履歴等があります。
それらに対して、使用者側がタイムカード等と実際の労働時間が異なること(例えば、社内に残っていたが、業務をせずにゲームなどをして時間を過ごし、退社時にタイムカードを打刻していた、など)を主張しても、使用者側の主張が認められること難しいと思われます。
2 使用者側の対応
とにかく労働者の労働時間を日頃から管理することに限ります。
3 残業代請求訴訟で和解するメリット
残業代請求訴訟など労働事件では、判決ではなく、和解で解決することが多いですが、そのメリットは、①付加金(裁判所が裁量によって決める制裁金のようなもので、下手すると判決で認められた残業代と同額の支払いが命じられることもあります)をカットできる、②遅延損害金(労働者が在職中は年6%、退職すれば年14.6%)をカットできる、③会社名が判例集に載る(会社のイメージダウンにつながりかねない)ことを防げるということです。
第4 残業代請求の流れ
労働者から残業代を請求された場合、労働者単独で請求しているのか、労働者側に弁護士がついているかで、会社としての対応や今後の見通しが異なってきます。
第5 労働事件と行政機関
1 労働事件の解決方法
労働事件においては、紛争を解決できる機関や手続は、裁判所での裁判に限られません。例えば、労働局(労基署の上級官庁)や労働者支援事務所(県の労働委員会の支部組織)のあっせんや労働組合との団体交渉、裁判所での労働審判手続等があります。
2 労基署について
労基署は、臨検監督といって、強制的に調査をする権限が与えられています。労働者からの申告(実名での被害相談)や匿名相談の件数が多いと、労基署から臨検監督の対象事業場に選定されることもあります。
第6 結び
前回に引き続き、残業代の関係では、実体に即した労務管理の必要性をお伝えしてきました。
また、これまでシリーズでお送りしてきた労働事件全般に共通することですが、使用者側としては、労働者と正面から向き合い、早期に紛争を解決する(できるだけ裁判を避ける)必要性をお伝えしてきました。
その中で、早期の段階から、是非、弁護士に相談していただき、紛争を早期に解決していきましょう。
労務関係のシリーズは、今回のセミナーをもって一旦終了となり、次回以降は、労務関係以外のテーマで、企業の皆様のお役に立つようなセミナーを実施していきます。
次回セミナーは、平成28年5月20日の午後2時から「賃貸借トラブルに対する覚悟と備え」と題し、賃貸借契約に関するトラブルと対処法をお伝えいたします。皆様のご参加をお待ちいたしております。