ニュースレター

ニュースレター KabashimaLawJournal 2019年3月発行 Vol.19

民法改正~消滅時効~(弁護士 大野智恵美)

みなさんこんにちは。弁護士の大野智恵美と申します。今回は、民法改正について、少しではございますが、解説させていただきます。ご存じの方も多いかと思いますが、民法が大幅に改正され、一部の規定を除き、西暦2020年4月1日に施行されることとなりました。改正点は広きにわたり、賃貸借契約の紛争防止のために敷金や原状回復義務の内容が法定されたり、法定利息が年3%となったり等、皆様のお仕事や生活に直結する改正が多々なされます。今回はその中でも皆様に特に関係の深い「消滅時効」について取り上げたいと思います。

改正される点はいくつかありますが、特に注意が必要なポイントは、次の➀~➄です。

 

➀時効の起算点

「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年(改正民法166条1項1号、主観的起算点)、「権利を行使することができる時」から10年(改正民法166条1項2号、客観的起算点)で債権が時効により消滅することになります。

主観的起算点は、今回の改正で新しく定められたものです。

例えば、西暦2020年4月1日、X社(売主)とY社(買主)の間で、商品αの売買契約を締結した場合、X社は、契約で定めた代金支払日(西暦2020年5月1日)が到来をもって、その時から権利を行使することができることを知ったので、2020年5月1日が5年間の時効の起算日(主観的起算日)になります。

➁短期消滅時効の廃止

これまで、職業別の短期消滅時効(弁護士の報酬:2年、飲食代金:1年等)が規定されていましたが、今回の改正で廃止され、原則5年に統一されます。また、商法522条の5年の消滅時効も廃止されます。

➂不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

改正前と同じく、不法行為の被害者又は法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年で時効消滅します(改正民法724条1号)。

一方、これまで不法行為時から20年の期間は、除斥期間(援用を必要とせず、当然に権利がなくなること)と解されてきましたが、今回の改正で、20年の期間が時効期間であると明示されました(改正民法724条2号)。権利を消滅させるためには、待っているだけではだめで、時効の援用(時効により権利が消滅していると主張すること)が必要になります。

生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間の特則

の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効については、債務不履行によるものか、不法行為によるものかを問わず、時効期間が長くなります。具体的には「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年(改正民法724条の2)、「権利を行使することができる時」から20年(改正167条)になります。

時効の完成猶予・更新

これまで時効を「中断」(時効の期間の経過をリセットする)「停止」(時効の期間を過ぎても、ある時から6か月が経過するまで時効が完成しない)の制度がありましたが、今回の改正で廃止され、新たに「完成猶予」「更新」の制度が規定されました。

完成猶予=猶予事由が発生しても時効期間の進行自体は止まらないが、本来の時効期間の満了時期を過ぎても、所定の時期を経過するまでは時効が完成しない。

更新  =更新事由の発生によって進行していた時効期間の経過が無意味なものとなり、新たにゼロから進行を始める(つまり、時効の期間の経過をリセットする)。

次に、裁判上の催告について、完成猶予及び更新の効果が明文化されました(改正民法147条)。

また、差押え等にも、時効の完成猶予の効果が与えられました(改正民法148条)。

そして、今回、協議合意による時効の完成猶予の制度も新しく規定されました。権利に関する合意を書面(電磁的記録(解釈上、メールも含まれます)でも可能)ですれば、時効期間が延ばせることになります(最大1年、改正民法151条)。

 

弁護士法人かばしま法律事務所 代表弁護士 椛島修事務所設立30周年 インタビュー

松本(かばしま法律事務所所属弁護士)

平成元年に事務所を設立されたということですが、当初の状況は、どうでしたか。

椛島修弁護士(弁護士法人かばしま法律事務所 代表弁護士)

誰も知らない久留米で独立したので、とにかく色んな所に出掛けて行って顔を覚えてもらえるようにしました。それでも、1年くらいで貯えていた預金も、ほとんどなくなってしまいました。しかし、それから少しずつ久留米に浸透していき、お客様も徐々に増えていきました。

松本

設立当初から変わらない理念はありますか。

椛島弁護士

独立当初から、「人の心の痛みが分かる弁護士になりたいという気持ち」を基本に、お客様が気を使わなくても気軽に相談できる弁護士、法律事務所を目指してきました。そういう観点から当初、事務所の執務開始を午前10時からとしていましたが、それでは、一般企業の業務開始時間に合わせることができず、相談しやすい環境とはいえないと考え、20年ほど前から、事務所の執務開始を午前8時30分からと変更しました。

また、私も含め事務所に所属している弁護士に対して、事務員は「先生」と呼んでいましたが、事務所内で「先生」と呼んでいると、自然とお客様も、そう呼ばなければいけない様な雰囲気になり、そうなると、お客様も気軽に相談しにくい状況となってしまうと思われましたので、「先生」と呼ばせないことにしました。

さらに、当事務所では常にBGMを流すようにしたり、お客様に出すお飲み物をお客様が選べるように(夏:5種類、冬:3種類)したり、名刺に私の携帯番号を載せたりもしました。これらも相談しやすい事務所作りのためでした。

松本

設立当時と現在とでは弁護士をめぐる状況に変化はありましたか。

椛島弁護士

設立当時、筑後地区の弁護士数は少なく、売り手市場のような感じがありましたが、その後は、筑後地区も弁護士が増加するとともに、インターネットの普及などにより、お客様も法的素養が深まり、弁護士が、より高度な専門的知識を求められる買い手市場に変わってきたと感じています。

松本

弁護士であり経営者でもあるという立場で苦労された点はございますか。

椛島弁護士

当事務所は、5年ほど前に法人化しました。それまでは、私も一人のプレイヤーとして、事件を数多く抱えて働いていました。

しかし、そうすると10人前後の所属弁護士それぞれが担当している事件を、所長である私が良く見ることができないという状況が生じることがありました。このような状況のなか、「ベテランの椛島弁護士に依頼したのに、なぜ見てもらっていないのか」といったお客様のお叱りの意見をいただくことが何度かあり、このシステムは良くないと感じることがありました。

そこで、私が抱える事件数を減らし、事務所が抱える全事件を把握することに努めました。

私は今は、4~5件くらいしか直接担当せず、事務所が抱える全事件について、初回の相談時から打ち合わせを行い、そのうえで、担当弁護士を主任として事件処理にあたらせるとともに、その後も随時、私との間の報・連・相を徹底させることで、私が全事件を把握し指揮できるようにしています。

松本

今後、かばしま法律事務所はどのように発展していくのでしょうか。

椛島弁護士

前にもお話したように、現在はより専門的で質の高い法的サービスを受けることを望まれるお客様が増えてきておられますので、その要望に応えられるように、当事務所としては、企業法務、離婚、相続、交通事故の4つの分野を中心に、弁護士と事務員から構成する専門委員会を設置し、各委員会において、各分野の更なる研鑽や法的知識、ノウハウの蓄積を行っていきたいと考えております。

そして、各分野での専門性を深め、地域で一番のより良い法的サービスを提供することによって、他の法律事務所との差別化を図り、発展していければと考えております。

松本

最後にお客様に向けて、メッセージがあれば、どうぞ。

椛島弁護士

当事務所は、これからも相談しやすい事務所を目指し、かつ、専門性の高い法的サービスを提供していきたいと考えておりますが、その他、弁護士数も11名に達しており、大型の難解な事件についてもチームを組んで複数名で機動的に対応できるようにしておりますので、今後も、当事務所を、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 

裁判官視点での証拠の重要性

■判事補の弁護士職務経験という制度で、裁判所から2年間出向のような形でかばしま法律事務所において弁護士として執務をさせていただいております。

■今回は、裁判官としての視点で、証拠の重要性についてお話させていただければと思います。よく、弁護士に相談に行くと、「それは証拠がないから厳しいですね。」、「証拠を探してください。」などと言われることがあると思います。

例えば、AさんがBさんに100万円を貸したが、Bさんが借りたことを否定して100万円を返さないという事案を想定してみましょう。裁判の場では、Aさんは、「100万円をBに貸した。」と主張し、Bさんは、「Aさんからお金を借りたことなどない。」と主張します。この場合、裁判官という第三者がお金の貸し借りの有無をジャッジしなければいけません。裁判官といっても人間ですので、お金の貸し借りがあったか否かは、客観的な証拠(借用書、金銭消費貸借契約書、覚書等)によって判断するほかありません(なお、相手が100万円借りたことを認めてくれれば、借用書等がなくても、100万円の貸し借りがあったという前提で裁判を進めることになります。この場合、そもそも裁判にはなっていないと思いますが…)。

このように、裁判では客観的な証拠の有無で勝負が決まるといっても過言ではないので、前述のような弁護士の対応になるのです。

信頼している人への貸付けだから、借用書なんて作っていないという方もいらっしゃるかもしれませんが、借用書を作成しないで貸し付けることほど危険なものはありません。書面を作らずに貸し付ける場合には、二度と返ってこないことを覚悟しておいたほうがいいと思います。

ただ、借用書がない場合に、絶対に裁判で勝てないかというと、そうとも限りません。例えば、貸し借りがあったとされる日に、Aさんの口座から100万円が引き落とされていて、他方Bさんの口座に100万円の入金があったことが証拠上はっきりしたとします。

この場合、上記100万円の出入金記録のみでは、ダイレクトに貸し借りがあった事実が認められるわけではありませんが、裁判所としては、上記事実を間接事実として、お金の貸し借りの事実を推認することができます。

このように一口に証拠といっても、その事実をダイレクトに立証する(借用書等)ものもあれば、間接的に事実を推認させるもの(100万円の出入金記録)もあります。

そのため、裁判をするに当たって、どれが証拠になって、どれが証拠にならないかの峻別を必ず弁護士は行っています。

弁護士としてはある程度初回のご相談の際に事件の見通し(勝てる事案かそうでないか)を立てることになるので、ご相談に来られる際は、関係する資料をできる限り全て持ってきてほしいと思っています。ご相談者にとっては関係ないと思っていた証拠が、実は有力な証拠だったということもよくありますので、是非一度弁護士にお見せいただければと思います。

(なお、お金の貸し借りの事案ではありませんが、最近は交通事故の事案におけるドライブレコーダーの重要性が高まってきています。従来はお互いの言い分が食い違ったために長引いていた示談交渉も、ドライブレコーダーの映像があれば、事故態様は一目瞭然となり、速やかに示談を成立させることも可能となります。今話題となっているあおり運転の証拠にもできますし、ドライブレコーダーの搭載は強くお勧めします。)

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