ニュースレター

ニュースレター KabashimaLawJournal 2019年9月発行Vol.21

~外国人(特に留学生)の雇用について~

最近は外国人が働いている姿をよく見かけます。そこで今回は、外国人留学生をアルバイトとして雇用する際のミニ知識をご紹介します。

1.外国人なら誰でも雇用できるのか?~在留資格制度~

【事例】

コンビニエンスストアを営んでいるA会社は、外国人留学生をアルバイトとして雇用していた。

Yがよりお金を稼ぎたいのでもっと働かせて欲しいと申し出たので、X会社は、Yを週6日、6時間程度勤務させることにした。すると、あるとき、警察が来て、「あなたは出入国管理法違反を犯した疑いがある。」と言われた。

【解説】

外国人が日本に入国したり、在留したりするには、いずれかの在留資格に該当することが必要です。

そして、外国人は、付与された在留資格の範囲内でのみ活動ができます。

留学生は、「留学」という在留資格で入国をしていますが、この在留資格は、原則として就労が認められません。

そうすると、あらゆる飲食店・コンビニ等で働いている外国人は、全て違法な就労となるのか、というと、そういうわけではありません。

留学生であっても、入国管理局から資格外活動の許可を得ていれば、その許可の範囲内で働くことができます。しかしながら、その場合の就労時間は、原則として週28時間が限度ですので、それを超えることはできません。

そして、週28時間を超えて労働をさせた場合には、「外国人に不法就労活動をさせた者」として、入管法上定められた刑罰である不法就労助長罪(刑罰は3年以下の懲役か、300万円以下の罰金、あるいはその両方です。)に該当する可能性があります。

したがって、警察官の話したとおり、A会社は、不法就労助長罪で処罰される可能性があります。

【対策】

皆さんも、外国人を雇用される場合には、当該外国人の在留資格を確認して、本当にその就労ができるのかをチェックしておかなければ、後に不法就労助長罪で処罰される可能性があります。

在留資格のチェック方法は、在留カードを確認するのが一般的です。例えば、留学生の在留カードには、その裏面に資格外活動の許可を得たかどうかを記載する欄がありますので、当該裏面を確認して、アルバイトができるのかどうかということと、アルバイトの上限時間を確認して、その範囲内で活動をさせるようにしましょう。

働き方改革~年休制度~

1 はじめに

今般「働き方改革」の一環として、年休制度が改正されました。そこで、ここでは年休制度の一般論と、今回の改正点についてご紹介したいと思います。

2 年休とは

(1)年休とは、年次有給休暇の略称です。これは、労働者が賃金を受領しながら休暇を取ることができる制度です。使用者が(労働者の意見を聞いた上で)具体的な年休の日程を決定し、それに従って労働者が年休を消化していくというヨーロッパの仕組みとは異なり、日本においては、年休取得の時季を原則として労働者が決定することとなっています。

最高裁判例によれば、年休の権利は、法定の要件(雇入れの日から6か月以上継続して勤務しており、かつ、8割以上出勤したこと)を満たすことで当然に発生する権利(年休権)と、労働者が年休の具体的時期を特定する権利(時季指定権)とから構成されています。6か月以上継続して勤務した労働者には10日の年休が与えられますが、勤続年数が増えるにつれ、最大20日の年休が与えられます。

(2)もっとも、労働者の請求した時季に年休を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者は、年休を他の時季に与えることができます(時季変更権)。そして、最高裁判例によれば、「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるかどうかについては、業務遂行のために必要な人員を欠くなど業務上の支障が生じることに加え、人員配置の適切さや代替要員確保の努力など使用者が状況に応じた配慮を尽くしているかどうかも踏まえて判断されます。

 

(3)使用者は、労働者が年休を取得したことについて、不利益な取扱いをしてはならないとされています。また、年休権は、2年の消滅時効にかかります。これを裏から言うと、年休は1年に限って繰越しができるということになります。

3 働き方改革について

「働き方改革」の一環として、使用者に年休を付与する義務が課されました。具体的には、10日間以上の年休が与えられる労働者については、毎年5日間、使用者が時季を指定して年休を与えなければならないとされました。もっとも、労働者が時季指定や計画年休により年休を取得していた場合については、その日数分については使用者が指定する必要はありません。

この改正点は、平成31年4月1日から施行されています。使用者においては、これまで以上に労働者の年休取得状況に目を配り、年休取得に漏れがないようにしていく必要があります。

 

相続法改正~配偶者居住権~

前回のニュースレターから、平成31年1月より順次施行されている改正相続法に関し、改正のポイントを紹介させていただいております。今回は、令和2年4月より施行される「配偶者居住権」についてです。

1 配偶者居住権とは

「配偶者居住権」は、今回の改正で新設された制度であり、被相続人の死亡時に、被相続人所有の建物に配偶者が居住していた場合、遺言又は遺産分割によって、配偶者自身が死亡するまでの間、無償で、当該建物の全部を使用収益することができる権利です。

2 従前の制度と改善点

これまで、被相続人所有の建物に配偶者が同居している状態のまま、被相続人が死亡した場合、配偶者が当該建物に居住し続けるためには、当該建物自体を相続するか、当該建物を相続した者との間で、使用貸借契約又は賃貸借契約を締結せざるを得ませんでした。しかし、相続財産が建物しかなく、配偶者自身が充分な資産を有していない場合、配偶者は相続分(建物価値)のうち、自己の法定相続分を超える部分についての代償金を他の相続人に支払えないなど、相続の方法として、配偶者の保護に欠ける事態が生じていました。

(例えば、被相続人が1000万円の建物のみを残して死亡し、妻と子A、子Bが相続人であった場合、改正前の法律では、妻が建物を単独で相続すると、妻は子A、Bそれぞれに250万円の代償金を支払う必要がありました(※代償金を支払わない合意も可能))。

そこで、今回の改正では、建物の所有権と配偶者居住権(使用収益権)を分けることで、所有権は他の相続人(子など)に、使用収益権は配偶者に相続させる(又は遺贈する)ことが可能になったため、配偶者の負担が小さくなりました。

3 改正のポイント

配偶者居住権のポイントは以下の4点です。

遺言又は遺産分割で決める必要があること

 ②対象建物が、被相続人の単独所有、又は被相続人と配偶者の2人での共有であること

 ③配偶者は居住建物の通常の必要費を負担しなければいけないこと

 ④配偶者居住権を第三者に対抗するには、登記をしなければいけないこと

4 ポイントの解説

①について

配偶者居住権は、被相続人の遺言か、相続人間の遺産分割で決めなければ発生しません。なお、遺言もなく、遺産分割協議が整うまでの間は、配偶者は、「配偶者短期居住権」という権利を取得し得ます。ただし、この権利は、もともと居住していた部分の使用権限だけであり、第三者への主張ができないなど、配偶者居住権に比べ弱い権利です。

②について

建物が、被相続人と配偶者以外の第三者(被相続人の子など)の共有となっていた場合は、配偶者居住権は認められません。

③について

建物管理に係る必要費(固定資産税など)は、配偶者が負担することになります。

④について

建物の相続人が、配偶者居住権を取得した配偶者に無断で、建物を第三者に売却したとしても、配偶者居住権について、登記を行っていない限り、配偶者居住権を第三者に対向することができません(配偶者居住権がないのと同じ状態です)。

5 終わりに

今回は配偶者居住権について、ポイントを説明しましたが、もっと詳細な規定がもちろん存在しています。もっとも、誤解を恐れずに言えば、簡単には「夫が死んだ時に夫名義の建物に住んでいれば、今まで通り住み続けられる」権利ということですので、詳細は実際にご相談に来ていただき、確認いただければと思います。

今回の改正は他に、遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求権の金銭債権化)、自筆証書遺言の方式の変更、預貯金の払戻制度、特別の寄与をした者の権利の新設など、制度の新設を含む大きな変更がされています。このニュースレターでも順次紹介する予定ですし、当事務所にて新制度の下での相続に関するご相談をお待ちしております。

 

弁護士雑記(自己紹介):弁護士 渡部裕太郎

1 はじめに

平成30年12月より、かばしま法律事務所に入所した渡部裕太郎(わたなべ ゆうたろう)と申します。生まれは、みかんや道後温泉で知られる愛媛県です。地元の高校を卒業した後、九州大学法学部、九州大学法科大学院へと進学しました。司法試験合格後は、福岡で司法修習時代を過ごし、ご縁があって久留米で弁護士としての第一歩を踏み出すこととなりました。

©福田康亮

2 弁護士を目指したきっかけ

法学部の授業では、多種多様な法律の解釈論を学んだり、判例を用いた事例研究等を行ってきました。その中で、私は、社会で生じる紛争の多くが法律と切っても切れない関係にあることに気付かされました。

それから、「法律を駆使できるようになれば、多くの紛争を法的観点から予防・解決することができることができる。自分もそのような仕事をしてみたい。」と思うようになり、弁護士を志すようになりました

3 趣味

ご飯屋さん巡り、サイクリング等が趣味です。

久留米は、焼き鳥やラーメンに代表されるグルメの街であり、お店を開拓していくのが楽しみです。

サイクリングについては、街乗り用と遠出用で2台の自転車を使い分けており、暇さえあれば久留米界隈を走り回っております。最近は、筑後川の河川敷を自転車で走ることの爽快感に目覚めました。

4 最後に

私は、弁護士として、依頼者がどのような解決を求めているのか、依頼者に合った解決策は何なのかということを明らかにし、その解決策の実現に向けて最善を尽くしたいと思っています。

そのため、私は、依頼者の発する一つ一つの言葉に耳を傾け、より的確に依頼者のニーズを酌み取ることができるように努めています。

また、依頼者のニーズに沿って的確な活動ができるように、日々の研鑽を怠らず、知識・経験を深めるようにしています。

まだまだ未熟な身ではありますが、久留米の皆様のお役に立てるよう誠心誠意職務に取り組む所存ですので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

おしらせ

令和元年11月15日の17時より、翠香園ホテルにて、当事務所のお客様感謝祭(参加費無料)を開催させていただきます。

同感謝祭では、当事務所代表弁護士 椛島修、パートナー弁護士 竹田寛の講演及び懇親会を企画いたしております。

詳細な実施内容は後日また改めてご連絡させていただきますが、皆様のご出席を、心よりお待ちしておりますので、ご出席いただければ幸いです。日程の確保のほど、宜しくお願いいたします。

(編集担当 弁護士 泊祐樹  松本圭史)

法律問題でお困りなら
筑後地方で最大級
30年以上の実績の
弁護士法人かばしま法律事務所へ
0942-39-2024
当事務所では電話相談はできませんのでご了承ください。
お問い合わせ・面談予約はこちらから 
平日8:30~17:00