弁護士コラム

就業規則に関するQ&A


〈就業規則の作成・届出義務〉

Q1.当社の事業所では、正社員が7名、パートタイマーが5名います。就業規則を必ず作成しなければならないでしょうか?

A.常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出義務があります。

(解説)

労働基準法89条では、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、一定事項について就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署になります)に届けなければならない旨定めています。

ここでいう「労働者」には、正社員、パートタイマー、契約社員など雇用の形態を問わず当該事業場で使用されている労働者が含まれますが、派遣労働者や下請労働者は含まれません(使用者を異にするためです)。

本文では、正社員が7名、パートタイマーが5名とされており、いずれの形態で雇用されている者も89条に規定されている「労働者」に含まれることから、常時10人以上の労働者を使用する場合に該当し、就業規則の作成・届出義務があります。

 


派遣労働者を含めて10人以上になる場合の就業規則作成義務〉

Q2.当社の事業所では、正社員4名、パートタイマー4名、派遣労働者が3名います。このような事業場でも、就業規則の作成・届出義務がありますか?

A.派遣労働者を含めて初めて10人以上となる場合には、就業規則の作成義務はありません。

(解説)

先ほどの設問でも説明しましたが、派遣労働者は、差遣元の事業者の「労働者」(労働基準法89条)に数えられ、派遣先の「労働者」としては数えられません。

そのため、本問のように、派遣労働者を除けば労働者の数が10人未満となる事業場では、就業規則の作成・届出義務はありません。

もっとも、労働者10人未満の事業場でも、就業規則は作成することが望まれます。

 


 〈就業規則の効力について〉

Q3.当社では、就業規則を置いていますが、当社従業員との雇用関係において、どのような効力を有するのですか?

A.➀労働契約法第12条においては、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分においては、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による」と定められています(就業規則の「最低基準効」と称されます)。

したがって、企業経営の悪化により、労働条件を引き下げる必要があるということで、各労働者がこれに同意しているという場合であっても、個別の労働契約でこれを引き下げることはできません(就業規則を改正するか、労働協約を締結する必要があります)。

②また、労働契約法第7条では、労働契約を締結する場合の契約内容は、就業規則よりも有利な特約が個別に定められた場合を除いて、就業規則で定める労働条件により定められる旨規定しています。

したがって、就業規則が存在する企業で採用される労働者との関係では、より有利な、個別的特約をしない限りは労働契約の内容は就業規則の定めによることになります。

なお、就業規則は、当該事業場に適用される法令及び労働協約に反してはならないと定められています(労働基準法92条)ので、その部分の就業規則の定めは効力が認められません(正確には、法令に違反する就業規則の条項は一般的に効力が認められなくなりますが、労働協約違反の場合には、当該労働協約を締結した労働組合の組合員か、労働組合法17条で定める一般的拘束力が及ぶ労働者に対してのみ効力が認められなくなります)。


 〈就業規則の効力発生時期〉

Q4.当社では、新しく就業規則を作ったのですが、これはいつから効力が発生しますか?

A.就業規則を労働者に周知させた時点から、効力が発生します。

(解説)

就業規則の効力が発生するためには、当該就業規則が労働者に周知させたものであることが必要です(労働契約法7条。また、フジ興産最高裁判決)。

他方で、就業規則については、動労基準監督署に届け出る義務(労働基準法89条。届出義務)や、労働者の意見聴取義務(労働基準法90条1項)もありますが、仮にこれらの手続を欠いていたとしても、上記のとおり労働者を周知させていたのであれば就業規則の効力自体には影響を及ぼしません。

 

                                      以上

 

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