弁護士コラム
新型コロナウイルスに関するQ&A第3弾(テレワークについて)
前回、新型コロナウイルスに関するQ&A第2弾を掲載しましたが、今回はその第3弾です。
在宅勤務をする上での労働時間の管理等についてお話していきたいと思います。
Q 当社では、新型コロナウイルスの影響で、テレワークを導入していますが、テレワークをしている従業員に対しては、労働法に関連する法律は同じように適用されるのですか?
A.適用されます。
【解説】
労働基準法上の労働者である限り、会社に来て勤務する場合でも、いわゆるテレワークの場合でも、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令は適用されることになります。
労働基準関係法令の適用がありますので、特に次の点に注意が必要です。
➀労働条件を明示すること
事業主は、労働契約締結に際し、就業の場所を明示する必要があります(労働基準法施行規則5条2項)。そのため、在宅勤務の場合には、就業場所として従業員の自宅を明示する必要があります。
②労働時間を把握すること
使用者は、原則として労働時間を適正に管理する必要があるため、従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録していなければなりません。
(※労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準・平成13.4.6)
③通信費・情報通信機器等の費用負担について
使用者・労働者いずれがこれらの費用を負担するかは、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが適切です。
また、使用者が費用を負担する場合における限度額や、労働者が請求する場合の請求方法についても定めておく方が望ましいでしょう。
なお、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないこととされています(労働基準法89条1項5号)。
Q テレワーク実施の際に要したパソコン代金、回線の工事費用、通信費用などは、会社が負担する必要があるのでしょうか?
A.費用負担に関しては十分に労使で話し合い、ルールを定めておくことが必要ですが、会社がパソコンを従業員に貸与したり、通信費用等について一定額を会社負担としているといった例が多いようです。
【解説】
先ほどの質問に対する回答でも述べましたが、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければなりません(労働基準法89条5号)。
テレワークの導入によって発生する費用としては下記のものが考えられます。
・情報通信機器の費用
パソコンや携帯電話等については、会社側が自身の負担のもとで入手したものを従業員に貸与する例が多いようです。
・通信に関連した費用
在宅勤務の場合、自宅内のブロードバンド回線の工事費、基本料金、通信回線使用料といったものが発生します。
工事費については、ブロードバンド回線が自宅内に配線され、従業員自身が個人的にも使用することがあるため、その負担を個人負担としている例も見られる一方、会社が負担しているケースもあります。
回線の基本料金や通信回線使用料については、個人の使用と業務使用との区別が困難であるため、一定額を会社が負担するとしている例が多く見られます。
・文具、備品の使用に要した費用
消耗品については、会社が購入した文具消耗品を使用することが多いです。
切手や宅配メール便について、事前に配布できる分はテレワークをする従業員に渡しておき、会社宛の宅配便は着払いにするといった対応が考えられます。
また、やむを得ずテレワークをする従業員が文具等の購入や宅配メール便の代金を一時立て替えておくこともありうると思われますが、この場合にどのようにして精算をするのか、その精算方法もルール化しておくことが望ましいです。
もし事前に、これらの費用負担に関する協議をしていなかった場合には、従業員からテレワークに要した費用の支払を求められ、紛争になるかもしれないので、ご注意ください。
Q テレワークをする従業員について、どのようにして労働時間を把握すればよいのでしょうか?
A.テレワークをする従業員に関しても、原則として使用者が労働時間を把握し労働時間を適切に管理する責務があります。勤怠管理の方法としては、電話、Eメールの他、勤怠管理ツール(アプリなどで始業・終業時間等が管理できるシステム)を用いるといった方法が考えられます。
【解説】
テレワークを行う場合でも、原則として、使用者は原則として労働時間を適正に把握する等労働時間を適切に管理する責務を有しています。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html)
においては、労働時間を確認し、記録するための方法としては、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によること等があげられています。
やむを得ず自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合には、上記ガイドラインを踏まえた措置を講じることが求められています。
具体的な労働時間の管理の方法についてですが、労働時間の管理としては、➀始業・就業時刻の管理と、②業務時間中の在席確認という2つの観点があります。
➀については、Eメールや電話により報告をしてもらうという方法が考えられ、実際に用いられています。また、勤怠管理ツールを用いて始業・就業時刻を管理している企業も数多くあります。
②についても、Eメール等で在席しているか離席しているかを確認する方法の他、勤怠管理ツール(アプリなどで始業・終業時間等が管理できるシステム)を用いて在席状況を確認するといった方法が考えられます。
以上