弁護士コラム

刑事事件と企業法務

 

弁護士の泊祐樹です。

本日は、「刑事事件と企業法務」と題して、弊所が行っている顧問先企業の方々への刑事事件に関するサポートに関して、その一部をご説明させていただきます。

 

1 会社の代表者が犯罪の嫌疑がかけられた場合

以前、弊所の顧問先において、詐欺罪の疑いを警察からかけられていてどうしたらよいか、と相談を受けたことがあります。
これは、同社が販売した商品に欠陥があり、それを購入した方から「欠陥のあるものをそれと知りながら黙って売りさばいて不当に利得を得ているため、これは詐欺だ。欠陥があると知っていたらうちはそもそも購入はしなかった」という相談が警察になされ、警察が事情を調べていた、というものです。
当然、同社の社長は自身が販売する商品に欠陥があるなど知りませんでした。このように客観的に欠陥のある商品を販売して不相当な利益を得ていたのだとしても、それについての故意(認識・認容)がない場合、同社の社長に詐欺罪は成立しません。
しかし、警察から事情を聞かれることなど、経営者であっても人生でそう多く経験することではありません。「うまく答えられなかったら逮捕されるのだろうか」「この時代、私が逮捕されるとなると会社名も含めてインターネットに公開されて、会社は立ちいかなくなるだろう」「そうなると従業員の生活はどうなるのだろうか」等と考えてしまい、簡単な質問にもうまく答えられなくなってしまうことが考えられます。そして警察からの疑いが深まり、捜査は長引き、社長も体調を崩し、、という悪循環に陥ってしまうこともあります。
そこで、弊所では、顧問契約とは別の契約を締結していただくこともございますが、このような場合には警察への事情の説明時に同席をしたり、経緯説明書などの資料を作成したりして、誤解がないように努めさせていただきます。また、被害者がいる犯罪の場合、被害弁償と示談書の作成のため被害者と連絡をとったり、交渉を行ったりもいたします。
刑事事件は、迅速な対応が何より大事です。ことが起きてからインターネット等で信頼できそうな弁護士を探す、相談の予約を取る、実際に相談に行く、その際に会社の概要に関する資料などを持参して周辺事情も理解してもらう、警察対応や示談交渉に関する契約を締結する、着手金を支払う、等の対応をしていると、あっという間に時間が経ってしまい対応が後手に回ってしまうことが考えられます。これに対して、事前に顧問契約をいただいていると、当該顧問先会社の事情を把握した担当の弁護士に電話やメールで相談をしていただき、すぐに対応に乗り出すことが可能です。そのため、刑事事件の対応の際には「顧問契約をしておいてよかった」というお声をよくいただきます。

2 従業員が逮捕をされてしまった場合

「従業員が急に逮捕されてしまって、仕事の引継ぎも行われていないため困っている。警察署の留置場に行って面会をしたいが、遠いし、会って話ができる時間も限られているし、本人も混乱していてまともに話ができないだろうし、警察の人の立ち合いがあるというし、、。なにより、重い刑に服することになってそれが報道されたら会社の評判も落ちてしまうし、、。先生、うちの従業員に会いに行って仕事のことを聞いてきてくれませんか。また、本人のためにも会社のためにも、本人の罪を少しでも軽くしてくれませんか」というお声もございます。
犯罪行為を行ってしまい、逮捕をされた場合、警察署の留置施設に身柄を拘束されます。そのように拘束されている人と、外にいる人とが話をするには、同施設に行き面会をする必要があるのですが、時間や回数制限がありますし、そもそも証拠隠滅防止の観点などから弁護士以外の人物との面会が禁止されている場合もございます。
弁護士がその人(被疑者といいます)の弁護人に就任した場合、警察の立ち会いはもちろん、このような制限もなく、逮捕者と面会をして話を聞くことができます。犯罪行為に関することだけでなく、仕事の引継ぎのためのお話をすることももちろん可能です。
そういった観点から、また、もちろん従業員を心配し、従業員のために、会社がお金を出して弁護士を派遣する、というケースもございます。もちろん、最終的には弁護士に依頼をするかどうかは当該従業員の判断によりますので、意思確認は必要となります。
なお、犯罪行為をしてしまったこと等を理由に当該従業員に辞職を求める可能性がある場合は、将来的に利益相反になる可能性があり、その際に会社側の代理人として動けなる可能性があるため、当該従業員の弁護人に就くことは避けておいた方がいい、というケースもございます。

3 大学での講義の講師を務めていたりと研鑽を積んでいること

私は、久留米大学の「裁判実際学」という講義にて、刑事事件についてをテーマとしてお話をさせていただきました。それに向けて、間違ったことを話さないよう、様々な文献にあたり、刑事事件に関する研鑽を積んでおります。
このように、当然ではございますが、弁護士になった後も知識の衰えを防止するため、ないし新しい知識を取り入れるために、弊所では研鑽に力を入れております。

4 まとめ

以上の通り、企業法務といえば契約書のチェックや損害賠償請求のお手伝いなど、もっぱら民事事件に関するサポートだけ、と思われがちですが、実は顧問弁護士は刑事事件に関しても顧問先会社の「いざ」というときに、重要な役割を果たしております。
このような観点からも、是非顧問契約についてご検討いただければ幸いです。顧問契約の具体的な内容等についてのご質問やご相談も承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

弁護士 泊祐樹

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